日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.190

1.PXとEXと病院経営
2.AmazonもPXを重視
3. 今後の予定

1.PXとEXと病院経営


PX(Patient eXperience;患者経験価値)とEX(Employee eXperience;従業員経験価値)との関連性はよく知られており、海外のさまざまな文献で指摘されています。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会でも注目しており、2020年12月に開催した第3回のPXフォーラムでもテーマに掲げました。ハーバード・ビジネス・レビューにも、「PXとEXの両方が向上すると、病院の評価および利益がアップする」という記事が掲載されています。

 

記事は米国で医療機関のPX向上をサポートするPress Ganey社のCSO(最高戦略責任者)とCMO(最高医療責任者)が寄稿したものです。「PXとEXのデータを統合して分析し、関連性を理解している医療機関はほとんどありません。経営陣はPX、EX向上はよいアイデアだと信じている傾向がありますが、損益など経営指標との関連についての洞察が伴わなければ、必ずしも適切な優先順位づけになりません」と指摘します。

同社の分析によると、PXが優れている病院は業績(安全性、医療技術、適切な入院期間、低い再入院率)も優れています。同様にEX、従業員のエンゲージメントはこれらの業績結果と相関しているといいます。また、米国のPX調査であるHCAHPS(Hospital consumer Assessment of Healthcare Providers Systems;エイチキャップス)でPXやEXの指標を長期的に改善した病院は、患者のケアに対するグローバル評価も改善することが示されています。

さらにPXとEXを同時に改善することで、複合的な効果が得らえることが明らかになっています。この分析では、PXの具体的な指標として、患者が看護師とのコミュニケーションをどう評価しているかに着目しています。それと、従業員の組織に対する態度、職務遂行能力、組織を他者に薦める可能性についての従業員の回答を反映したものをEX指標とし、両者の相関をみています。看護師とのコミュニケーション(PX)とEXの両方が1%以上向上した病院は、病院全体の評価が6ポイント上昇していました。逆にPXとEX、どちらかしか改善していない場合、全体評価は変化なしかわずかにマイナスとなっていました。

 

病院全体の評価がアップするのと財務実績との間には顕著な相関がみられました。病院評価が1ポイント上がると、純利益率が0.2%上がることがわかっています。つまり、病院評価が5ポイント上がれば利益率は1%のアップとなります。EX、PX、経営業績には多くの要因がありますが、この分析では患者と医療者双方の認識とエクスペリエンスの改善、業績が結びつけられます。「複合的な効果を示すエビデンスは、医療機関のリーダーの注意を引く必要があります。PXとEXでよりよいパフォーマンスを実現するための重要なストラクチャーとプロセスに注目することが必要です」と結論づけています。

 

 

全文は下記リンクから読むことができます。

Link:https://hbr.org/2019/05/when-patient-experience-and-employee-engagement-both-improve-hospitals-ratings-and-profits-climb?ab=at_art_art_1x1

 

 

 

2. AmazonもPXを重視


Amazonは誰もが知っている多国籍テクノロジー企業ですが、ヘルスケア分野にもかかわっています。ヘルスケア企業のデジタル革新を支援していて、目標の1つめとしてPXを掲げているといいます。世界に大きな影響を与える同社のヘルスケア分野の最近の動向が、Forbes誌で紹介されています。

 

Amazonは患者本位のヘルスケアを必要な時に、必要な場所で提供するために2019年9月、Amazon Careというサービスを開始しました。「バーチャルケアと対面ケア、それぞれのよいところを組み合わせたハイブリットケア」で、オンデマンドの緊急医療とプライマリ・ケアのサービスを提供しているといいます。

さらに、Amazon Web Services(AWS)というクラウドテクノロジープラットフォームを立ち上げており、英国のNHSをはじめとする世界最大級の医療機関や企業を支えています。昨年、公共部門のスタートアップをサポートする「Healthcare Accelerator」を発表しており、その目標として「PX向上、臨床医のエクスペリエンス向上、健康アウトカムの改善、医療コストの削減」の4つを挙げています。「公共部門のヘルスケア企業のデジタル革新を加速することを支援し、イニシアチブをとることで業界最先端のイノベーターと早い段階で協働する機会を提供することになる」と述べています。

ヘルスケアを取り巻く環境は変わっていきますが、今後はさらにPX重視の流れができるのではないでしょうか。

 

Link:https://www.forbes.com/sites/saibala/2022/02/21/amazons-growth-in-healthcare-is-unparalleled/?sh=79730d3b21b2

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、3月5日(土)12:30-13:30、オンライン勉強会「第8回PX寺子屋」を開催します。

テーマは以下になります。HCD(Human Centered Design;人間中心設計)とはユーザーの視点に立った設計を行うことで、ものづくりに欠かせない視点です。PXに取り組むうえで幅が広がる知識を得られる機会です。一般1000円、会員は無料となります。多くの方の参加をお待ちしています!

 

「PX概論」      医療法人社団 松井病院看護部長 菊池明美

「PXとHCDの親和性」 神奈川大学 経営学部准教授博士(情報学)/HCD-Net理事/ 認定人間中心設計専門家 飯塚 重善

 

申し込み期限は、会員の方が3月3日、非会員の方は3月2日までとなっております。下記リンクから申し込みください。

https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べます。多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


4月のフルマラソン出走に向けて減量しています、が苦戦中です。休日は近所にある海南鶏飯の専門店で、カリフラワーライス(ゆでたカリフラワーを刻んでライス仕立てに)を選んで食べていますが、なかなかおいしいです。(F)