日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.193

1.PX改善の5原則とは?
2.米国のPXイベント「ELEVATE PX2022」
3. 今後の予定

1.PX改善の5原則とは?


拡大し続けるデジタル技術を活用することでPX(Patient eXperience;患者経験価値)を向上させるのは不十分であり、PX向上の5つの原則を念頭に置く必要がある、と指摘するハーバードビジネスレビューの投稿記事を紹介します。

 

 

患者は消費者でもあり、エクスペリエンスを向上させる際にデジタル技術の活用に重点を置くことは、医療機関にとってささやかな優先事項となっています。しかし最近では、小売業者やテクノロジー系のスタートアップ企業、新しいケアモデルを推進する企業、デジタル技術を発達させた新規参入企業などが台頭してきていることを懸念していることから、デジタル改革に取り組んでいます。

具体的には、医師の検索、処方箋の更新、遠隔診断のサポート、検査結果へのアクセス、診療予約、免責金額の支払いなどをモバイルを使ってのデジタルサービスとして提供しています。ペイシェント・ジャーニーにおけるあらゆるタッチポイントでのエクスペリエンスを改善するための努力の結果です。

 

しかし、PX向上には次の5原則を考慮する必要があるといいます。

1.患者は消費者である

医療従事者は患者には関心を持つが、消費者には持ちません。そして多くの医療従事者は消費者、顧客といった言葉を嫌っています。その結果、医療ではケアの技術的側面(診断や治療)の質が重視される一方、消費者的側面(利便性、低コスト、親しみやすさ)はほぼ否定されることになりました。しかし、患者が治療や主治医の変更、服薬といった決定をする際は常に消費者です。医療機関は優れた医療と同時に素晴らしいエクスペリエンスを提供する必要性を認識しつつあります。

2.CXはテクノロジーを超える

消費者でもある患者は携帯端末を使って医師の診察を予約できること以上に、好きな時間、好きな場所で好きな医師とのアポイントをとれることを期待しています。そして消費者は、例えばレストランではメニューのデザイン、料理、ウェイターのサービスといったプロセスに基づいてサービスの良しあしを判断します。医療において優れたエクスペリエンスを実現するには、このようなプロセスを熟慮して分析し、技術やプロセスの変更、組織文化の変革、説明責任の強化といったことに応用する必要があります。

3.消費者・患者中心のプロセスの幅は非常に広い

CX(Consumer eXperience;消費者経験価値)とPXは、集中治療室に家族を見舞う時、薬の副作用について話し合う時、臨床試験の機会について専門家と話す時といった、ケアの場での広範な患者と医療者との相互作用を含みます。デジタルツールを使ってCX、PXを向上させるのは医師を探すことや受診の際だけではないのです。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ケアや健康管理の場は従来の医療機関といった施設をはるかに超え、自宅まで含まれるようになっています。

4.技術の進歩が卓越したエクスペリエンスを提供する機会に

医療機関は消費者に関するデータを活用し、患者のケアや健康に関するやり取りをカスタマイズすることができるようになるでしょう。たとえば電子カルテ、ヘルスケアの社会的決定要因、患者が報告するアウトカムなどのデータを活用して治療法、健康維持のための提案、ライフスタイルの変更プログラムの作成などを行います。AI(人工知能)によるプロセス自動化を活用した臨床・管理プロセスはよりインテリジェントなものになるでしょう。

5.戦略的議論における「患者」「消費者」の意味

「患者」「消費者」の言葉は、人がどちらか一方ではあるが同時に両方ではないという伝統的な使い方があるがゆえに、エクスペリエンスに関する戦略的な議論では「患者」であると同時に「消費者」でもあるという現実が見えにくくなっていました。

また、産業界がデジタル化の第一歩を踏み出す時、多くの場合、紙などの物理的なプロセスの電子版に相当するものをつくります。電子カルテは紙カルテをデータ化したものであり、自動預け払い機も人による窓口業務を電子化したものです。ただ、ここで「物理的なプロセス」と「電子的なプロセス」が同等であるとするのは、新しいテクノロジーを紹介するうえでわかりやい一方、欠点もあります。両者が同等とみなされると、デジタル技術の可能性やPXの重要性と複雑さを理解する妨げになる可能性があるからです。

 

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://hbr.org/2021/11/5-principles-to-improve-the-patient-experience

 

 

2. 米国のPXイベント「ELEVATE PX2022」


アメリカのPX推進団体であるThe Beryl Instituteが主催するPXを学べるイベント「ELEVATE PX2022」が3月28~30日、オンラインおよび現地(米インディアナ州のJWマリオットホテル)で開催されます。

世界でPX向上に取り組むヘルスケアに携わる人たちによる講演やセッションを通して、PXに関するさまざまな先進的な取り組みを知ることができるイベントであり、▽エグゼクティブリーダーシップ、▽医師や看護師のリーダーシップ、▽PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)、▽サービスの卓越性、▽患者と家族のアドボカシー、▽マーケティング/コミュニティへの働きかけ、▽医療の質/安全なオペレーション、▽人事/組織開発、▽臨床教育/スタッフ育成、▽患者と家族のアドバイザー、といった分野について学べるセッションが3日間にわたり繰り広げられます。

 

まだ申し込みを受け付けております。下記リンクのスケジュールをみて、興味がある方はご参加ください。

Link:https://web.cvent.com/event/bc16b2ff-05b0-4480-8fe3-51a959233fb1/websitePage:645d57e4-75eb-4769-b2c0-f201a0bfc6ce

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっており、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


先週末に友人宅でBTSのコンサート(オンライン・ライブストリーミング)を観ました。いつかライブ会場に行きたいという目標ができました。(F)