日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.226

1.第4期PXE養成講座が修了
2.第10回PX寺子屋
3. 今後の予定

1.第4期PXE養成講座が修了


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では11月26日、第5回PXE養成講座を実施しました。

 

2019年からスタートし、今年で4年目となったPXE養成講座には40人の方にエントリーしていただきました。全5回の講座の最後は、「PXを高めるコミュニケーション」がテーマ。当研究会理事の安藤潔さんを講師に進めていきました。

実際にコミュニケーションのトレーニングを受けた医師とそうでない医師を比較した研究では、前者の診療を受けた患者のPX(Patient eXperience;患者経験価値)が高いことが示されています。このトレーニングを受けた医師は、共感能力および自己効力感の向上とともに、『燃え尽き』を防ぐことができたと報告されています」と安藤さんは説明。PXを高めるために有効なコミュニケーションスキルとして、コーチングで用いられる「傾聴」「承認」を取り上げました。

 

傾聴では、患者の語りを引き出すために①相手の話を遮らない、②内容に判断を加えたり評価しない、③共感する、④沈黙を大切にする、⑤うなずきや相づちなどの肯定的なノンバーバル・メッセージを示す――などが必要だと指摘。承認は相手に関心をもって観察すること、承認する内容は具体的であるほうが効果的としました。

また、患者中心の医療を実現するうえでは患者からの「病いの語り」が重要です。患者の経験を言語化することであり、それを促すために「対話」が必要とされています。病いの語りは、患者と医療者の関係性の中から生みだされるものです。

今回はコミュニケーションがテーマなだけに、エクササイズやペアワークがふんだんに盛り込まれた内容でした。第4回で作成したジャーニーマップで抽出した対応策を、医療の質の評価であるドナベディアン・モデルに基づき「構造」「過程」「結果」に分けたうえで患者と医療従事者、医療従事者間のコミュニケーションを考えたり、ペルソナである患者の不安を軽減するコミュニケーションの取り方などのエクササイズに取り組みました。

 

 

受講者は全5回の講座後に課題(ホームワーク)を提出し、PXE認定試験を受けてもらいます。合格者の方にはPXEとしてPX向上のため、医療現場や企業などで活躍いただきます。12月10日開催の「第5回PXフォーラム」では、第3期生が実践内容を報告します。

第5期は、来年7~11月にかけて開講します。第1~4期生も参加し、学び直すことができます。また、1~4期生から講座の運営メンバーを募集します。グループセッションのファシリテーターなど、運営のサポートをしていただきます(全5回無料で参加できます)。

すでに募集を開始していますので興味がある方はぜひ下記リンクにアクセス・申し込みください!

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe5/

 

 

 

2. 第10回PX寺子屋


同じく11月26日に、第10回PX寺子屋(オンライン勉強会)を開催しました。

PXについて学ぶ勉強会は当研究会のスタート時から続けており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行後はオンラインで行っています。冒頭では、初めてPXに触れる人にその概念をわかりやすく伝える「PX概論」を毎回企画。今回は、やまと診療所の松本卓さんが講師を務め、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)とPXの違いや臨床現場でPXを考えることの意義について、具体的な取り組み例を交えながら話しました。

 

「PX・EXを高めるスマートホスピタル実現に向けた取り組みのご紹介」をテーマに、大成建設エンジニアリング本部デジタルファシリティソリューション室の小倉環さんが発表しました。

同社では、医療現場の課題解決に向けたアプローチとして、DXよる業務改革と快適・安全な施設空間をつくることによるEX(Employee eXperience;従業員経験価値)とPXの向上を打ち立てています。

DXについてはデジタル・ロボットへのタスクシフトを提案。ロボットへのタスクシフトにより、省人化・自動化が進み、人手不足を解消。身体的な負担軽減や働き方改革に貢献するといいます。施設の価値向上によってEXも向上すると指摘。病院内のさまざな設備機器との連携インターフェイスの一元化によりロボットと設備をつなぐことを検証しています。小倉さんは、多目的ロボットの活用、IoT活用による見守りの効果など、病院での実証の様子を説明しました。

また、交雄会新さっぽろ病院の新築の際に、職員アメニティを充実させた事例を紹介。吹き抜けの食堂やナッジ(簡単なストレッチをアシスト、健康意識を後押しする)サインをバックヤードの廊下に設置することでコミュニケーションや健康意識が高まるといったEX向上につながる建物への仕掛けについて触れました。

 

次回、第11回PX寺子屋は2023年3月25日に開催予定です。詳細が決まりましたらホームページや当メールマガジンで紹介します。

 

 

3. 今後の予定


PXの認知度向上のための年1回の一大イベント、第5回PXフォーラムを12月10日14:00~17:00に開催します。テーマは「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」。医療機関でのPX導入が進んでいる海外事情、日本でのPX導入・改善事例などを紹介します。

目玉となる企画は、フランス「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんによる特別講演「Patient experience: universal vision, specific actions(PX:普遍的なビジョンと具体的なアクション )」です。

 

参加費3000円(会員は無料)です(残席わずか!)。詳細および申し込みは下記からお願いします。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


仕事で訪れた某所にあるコーヒーショップは、静かな空間で一面に広がる紅葉を楽しめるつくりになっていました。エクスペリエンスが高い!(F)