日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.268

1.医療においてEXの推進要因は何か?
2.全米のPXスコアは改善の可能性
3.今後の予定

1.医療においてEXの推進要因は何か?


従業員エンゲージメントは、医療従事者の健康、忠誠心、パフォーマンスを示す指標と考えられてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは新たな課題を生み出し、リモートワーク、制度的人種差別、包括性、信頼、福利厚生、精神疾患をめぐる深い議論を促しました。

米国シアトルにあり、エクスペリエンス マネジメント プラットフォームを提供するクアルトリクスでは、他業界で展開されているEX(Employee eXperience;従業員経験価値)モデルを用いて、EX成果の主なドライバーを特定しました。Beryl Instituteが2022年に発行した、PXジャーナルに掲載された論文の概要を紹介します。

パンデミックが始まった2020年2月以降、米国では医療従事者が50万人以上減少したと推定されています。そのため多くの医療機関では、人手不足の穴を埋めるために、非常勤の臨床医を高額を払って雇用することになりました。ただでさえストレスの多い医療システムにさらなるストレスを与えました。2021年には医師の25%が、バーンアウトの原因をCOVID-19のパンデミックであるとしています。

約5000人の看護師と医師を対象にパネル調査を実施。EXに特化した現在の主要ドライバーを特定し、優先順位を付けました。相対的ウェイト分析をした結果、「敬意を持って扱われること」「戦略的アライメント」「ワークライフバランス」「成長と能力開発」が、EXを推進するうえで重要なテーマであることが示唆されました。

その後のさらなる分析では、医師と看護師のエクスペリエンスには大きな違いがあることが明らかになっています。特に「Well-being」「バーンアウト」「現職に留まる意向」に関連して、看護師はこれらの結果で医師よりも有意に低いスコアでした。

全文は、下記リンクからぜひご確認ください。

Link:https://pxjournal.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1710&context=journal

2. 全米のPXスコアは改善の可能性


安全性と品質に関するデータを20年以上にわたり収集、分析、公開してきた米国リープフロッグはこのほど、秋の安全性評点を発表しました。「全米のPX(Patient eXperience;患者経験価値)スコアは2年連続で悪化したが、その要因は改善している可能性がある」としています。

リープフロッグの安全性評点には、「看護師とのコミュニケーション」「医師とのコミュニケーション」「スタッフの対応」「医療に関するコミュニケーション」「退院情報」の5つのPX指標が含まれています。各指標のスコアは、病院受診後の全国的かつ標準化された調査に対する患者の回答に基づいて算出されます。

2022年には、すべての州でPX指標が大幅に低下しました。CMS(Center for Medicare and Medicaid Services)が前回エクスペリエンス指標を発表した2019年も同様でした。2022年に最も大きく低下した2つの指標は、医薬品に関するコミュニケーションとスタッフの対応でした。リープフロッグの医療格付け担当兼副社長であるMissy Danforthさんは、次のように語っています。

「例えば、医薬品に関するコミュニケーションのパフォーマンスが低い場合、患者が副作用を理解せずに薬を服用し、薬の有害事象に見舞われる可能性は避けなければならないでしょう」

しかし、PX尺度が低下している要因のひとつは、改善されつつあるのかもしれません。「COVID-19の期間中、医療従事者がこれまでと同じように病室に入らなかったことが、このスコアの大きな要因になった可能性があると現場から聞いています。もし病院のプロトコルが、薬剤師が病室に行ってベッドの横に座り、薬の飲み方や副作用の可能性を理解しているかどうか確認するために患者と会話をすることだったとしたら、COVID-19ではそれが行われていなかったということです」

その代わり、そのようなやりとりはほとんどバーチャルで行われていました。現在、病院はCOVID-19のプロトコルが緩和されたことを報告しており、これはPXにおいてはプラスの影響を与えることが考えられます。

Link:https://www.beckershospitalreview.com/patient-experience/patient-experience-measures-decline-but-theres-a-bright-spot.html

3. 今後の予定


PX研究会は12月9日、第6回PXフォーラム 「選ばれる医療機関の条件~EX~」をオンラインにて開催します。今年のテーマは「EX(Employee eXperience;従業員経験価値)」です。詳細および申し込みは、下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2023/

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11月18日12:30‐13:30、オンライン勉強会「第13回PX寺子屋」を開催します。

・「PX概論」 幌西歯科医院院長 濱田 浩美

・「スタッフのエンゲージメント、EXを高めるコーチングの取り組みについて」 PX研究会代表理事 曽我香織

研究会会員は無料、非会員は1000円です。申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/events/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


滑り込みでブラック・ジャック展に行ってきました。付箋が並んでいる光景は、ペイシェントジャーニーマップを思い出します。PXE講座ではオンラインで行っていますが、実際に集まって作成すると楽しいです。いつかリアルで実施したいです!(F)