日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.163

1.PX調査からわかる3つの改善点
2.デジタルでのPXに関する4つの洞察
3. 今後の予定

1.PX調査からわかる3つの改善点


米国の大企業の医療保険購買者を中心に設立されたリープフロッグ・グループは7月、PX(Patient eXperience;患者経験価値)レポートを公開しました。そのなかで、多くの患者が退院後のケアプランを完全に理解していない可能性が指摘されています。

 

PXに関する調査は3500 以上の病院から提供された、2019~20年のHCAHPS(Hospital consumer Assessment of Healthcare Providers Systems; エイチキャップス)と子ども向けHCAHPS、OAS CAHPS(Outpatient and Ambulatory Surgery;外来および日帰り手術)のデータをもとに集計・分析されたものです。「トップボックススコア」、つまり質問に対して最も肯定的な回答を選択した回答者の割合をもとに病院全体のパフォーマンスを評価しています。

2019年の入院患者においては、約71%が「友人や家族にその病院を勧める」と回答しています。また、約80%が医師や看護師とのコミュニケーションについて最高の評価をしています。一方で、約52%の患者しか薬の処方などを含めた退院後のケアについてはっきりとわかっていないことが明らかになっています。注意すべき症状や健康上の問題点を患者が理解しておくことは再入院を減らすことにつながります。最も肯定的でない回答が示されたカテゴリーは、投薬についてのコミュニケーション(64.1%)でした。

 

この調査からは、PXを改善できる領域としては以下の3つが挙げられます。

 

1.病院から在宅へのケアの移行

患者の87%が病院からの退院時の情報について最高の評価を与えています。しかし前述のとおり、退院後のケアについて理解しているのは約52%に過ぎません。

2.薬に関するコミュニケーション

スタッフが新薬の目的を説明したり、副作用について警告したりする頻度といった投薬についてのコミュニケーションを改善することで、医療過誤を減らしたり予防できる可能性があると指摘しています。

3.小児医療での懸念

小児科においては、スタッフに心配ごとなどを伝えることに抵抗を感じていないとした親または保護者は62%にすぎません。患者が伝えたいことを伝えるため、安全で居心地のよい環境をつくることは医療過誤の防止、危害を軽減するのに役立つとしています。

 

 

ほかの調査においても、退院時の情報提供や退院後の在宅療養についての説明が足りないとの指摘が見受けられます。退院時の対応は、日本においてもPXを高めるポイントとなりそうです。調査概要は、下記リンクからご確認ください。

Link:https://www.leapfroggroup.org/patient-experience-report

 

 

2. デジタルでのPXに関する4つの洞察


医療界でもDXが進むなかで、デジタルを使って軋轢のないPXをいかにつくり出すのかが問われています。米メディアプラットフォームのBecker’s Healthcareの掲載記事を紹介します。紹介されているサービス、プログラムを適用することはなくても、医療のデジタル化に求められているもの、何が必要なのかを把握できる内容となっています。

 

Becker’s Healthcare Reviewの主催で7月に開かれたウェビナーでは、米ノースカロライナ州に拠点を置くAtrium Healthの創設者・CEOであるJudson IvyさんなどがデジタルにおけるPXをテーマに語りました。次の4つが挙げられました。

 

1.PXを個別化できないと収益と競争上の優位性を失う

患者は“アマゾン効果”により、小売、旅行、銀行などの業界と同様に、医療においてもパーソナライズされたCX(Customer Experience;顧客経験価値)を期待しています。デジタルの利便性のもとで育ってきたミレニアル世代においては、アクセスに障壁があると医療への優先順位が落ちる可能性があります。もはや医療システムでは最高レベルのケアや設備を手に入れていると信じられておらず、医療へのアクセスのプロセスを変革する必要があります。

2.強化されたデジタル通信がロイヤルティを生み出す

患者がポータルやアプリを使うことが遅れているため、医療機関では現在EHR(Electronic Health Record;電子健康記録)を活用してテキスト、電子メール、自動電話などを介して患者と通信しています。通知によるメッセージ、アクションを呼び起こすというテキスト最優先の戦略はアプリよりも望ましいです。

3.Atrium Healthの新しいコミュニケーションプログラム

Atrium Healthでは昨年、顧客チャット、予定のリマインダー、テキスト管理、仮想ウェイティングと新たなチェックインのPXサービスを開始しました。顧客チャットでは1200人を超える患者とチャットでやりとりをしています。医療機関はサービスの普及によりオンラインでの予約増加と電話による問い合わせの減少を望んでいます。

4.運用リーダーのデジタル通信ツールへの関与

継続的な改善を確実にするためのプロジェクトは運用上で設計され、リーダーによって主導される必要があります。運用リーダーは既存のワークフローと統合するソリューションをつくる責任があります。そのほかのベストプラクティスとしては成功指標を定義し、データを分析、患者のフィードバックを聞くことが含まれます。

 

Link:https://www.beckershospitalreview.com/patient-experience/think-outside-the-app-4-insights-on-creating-frictionless-patient-experiences.html?utm_campaign=bhr&utm_source=website&utm_content=latestarticles

 

 

3. 今後の予定


第5回寺子屋を8月21日(土)に開催します。日本における“PX推進ホスピタル“、国立病院機構九州医療センターの2020年度の取り組みを報告します!

 

第5回PX寺子屋

・日時:2021年8月21日(土)13:00-14:00

・テーマ:「PX概論」 訪問看護ステーションアクティホーム 事業責任者 講内源太

「九州医療センター2020年度PXサーベイ実践報告」 国立病院機構九州医療センター 小児外科医長 西本祐子

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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PX研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


最近ある電化製品を購入したのですが、そのスペックの高さに感動しています。外箱にこのようなデザイン画が描かれていました。さて何でしょう?(F)