日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.169

1.第3回PXE養成講座を開催!
2.PENNA2021が開催中
3. 今後の予定

1.第3回PXE養成講座を開催!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は9月11日、第3回PXE養成講座を開催しました。

当メールマガジンでこれまでも紹介していますが、PXE(Patient eXperience Expert)は医療現場などでPX(Patient eXperience;患者経験価値)を広める人材を育成しています。2019年度からスタートし、第3期は過去最多の40人が受講しています。

 

この日の講座ではPXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)の比較、PXの評価手法を取り上げました。講師は日本におけるPX研究の第一人者である、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センターの青木拓也さん。医療界では近年「患者中心」という言葉がよく使われていますが、その本質的な部分が何なのかを全体を通して考える場になりました。

「患者の声」が重要な医療の質の指標であることは1960年代、すでに提唱されていました。医療の質を測る指標として、1980年代はPSが主流でしたが、「提供されたケア・医療が満足度に反映されていないことが問題視されました。そして1990年代に「患者中心のケア」という言葉が誕生し、PXが医療の質の指標であることが認識されるようになりました。2000年代からは手術がうまくいったか、適切な薬を処方されているかといった臨床的有効性とPXとの相関や、PXが患者行動、最終的に健康アウトカムにつながるといった検証研究が行われてきた、と話しました。

また、PSとPXの違いについて説明。「PSはアウトカム指標であり、具体的な課題の特定が困難なため質改善への活用がしにくい。一方、プロセス指標であるPXは多面的な手法で評価でき、具体的な課題の特定が可能。海外ではすでにPSからPXに置き換わっています」と青木さんは指摘しました。

さらにPXの評価手法として、「量的アプローチ(PX尺度を用いたサーベイによってPXを数値として定量化)」「質的アプローチ(患者の言葉や観察した事象を分析)」の2つがあり、相互に補完する関係性で、PXを評価するにはどちらも欠かせない重要なものとしました。

 

PX研究会では日本版PXサーベイの開発や日本ホスピタルアライアンス(NHA)のPXアンケート(HCAHPS)の結果分析など、主に量的アプローチを行ってきました。青木さんの話を聞き、今後は質的アプローチについても研究・実践を深めていきたいと思いました。

今年度のPXE養成講座は残り2回。次回10月16日は、質的アプローチの1つであるペイシェント・ジャーニーマップを作成します。

 

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

2. PENNA2021が開催中


英バーミンガムを拠点とする非営利団体のThe Patient Experience Network(PEN)では毎年、PXへのコミットメントが高い医療機関を表彰する「 Patient Experience National Network Awards(PENNA)」を企画しています。「PENNA2021」が9月13~17日までと、現在オンラインにて開催中です。期間中はさまざまなカンファレンスが開かれるほか、PXに関する取り組みのベストプラクティスを発表・表彰します。

 

PENは、PXに“groundswell”(オンラインツールを使うことでつながった人々が情報、サポート、アイディア、商品、交渉力といった必要なものを相互に手に入れる潮流)をつくろうとする個人グループによって2015年に考案、発展した組織です。NHS(National Health Service;国民保健サービス)およびPXとEX(Employee Experience;従業員経験価値)を高めたい組織にリソース・サービスを提供しています。

PENではヘルスケア業界にあるPXの先進事例を見つけ、称賛して多くの人と共有することと、PXとEXの改善を加速することを目標としています。thought leadership(将来を先取りしたテーマやその解決策を提示し、人々の間に議論を引き起こすような活動)を通して目標を達成し、ベストプラクティスを共有する仕組みを提供。そのためのトレーニングやコンサルティングサービスの提供を、パートナーとともに目指しています。パートナーとしてNHSのほか、英国のPXサーベイを実施しているPicker Institute Europe、英国最大のヘルスケアイベントを手掛けるHealthcare Conferences UKなどがあります。また、民間医療機関やGP(General Practitioner)、歯科医、製薬メーカー、卸売業者、患者グループ、PX関連サービスのサプライヤーなどがメンバーシップとして参加しています。

 

「PEN National Awards」は次の18のカテゴリーに分けられ、表彰されます。

・Commissioning for Patient eXperience(PXの立ち上げ)

・Communicating Effectively with Patients and Families (患者と家族たちと効果的なコミュニケーションを図る)

・CPES Award(CPESアワード)

・Engaging and Championing the Public(公衆の関心を引きつけ、擁護する)

・Environment of Care (ケアの環境)

・Fiona Littledale Award(フィオナ・リトルデール賞)

・Innovative Use of Technology, Social and Digital Media(技術の革新的使用、ソーシャル&デジタルメディア)

Integration and Continuity of Care(統合とケアの継続性)

・Measuring, Reporting and Acting (測定、報告と行動)

・Partnership Working to Improve the Experience(エクスペリエンスを向上させるパートナーシップ)

・Personalisation of Care(ケアの個別化)

・ Patient eXperience Team of the Year (PXチームオブザイヤー)

・Staff Engagement and Improving the Staff eXperience(スタッフのエンゲージメントとEXの向上)

・Strengthening the Foundation(財団組織を強くする)

・Support for Caregivers, Friends and Family(ケア提供者、友人や家族へのサポート)

・Using Insight for Improvement (改善のために洞察力を使う)

・Advocate and Transformer of Tomorrow(未来を論じ、変える人)

・Manager and Professional of the Year(PXの専門家/マネジャーオブザイヤー)

 

 

ベストプラクティスにエントリーされている医療機関とその取り組みの概要は、下記リンクのパンフレットに記載されています。

Link:https://patientexperiencenetwork.org/wp-content/uploads/2021/09/PENNA2021-Brochure-FINAL-130921.pdf

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

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PX研究会では2021年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)12:30 ~、開催です。申し込みは下記リンクからお願いします!

 

「PX概論」       原町赤十字病院  引田紅花

「摂食嚥下の学会報告」 幌西歯科(札幌市)院長 濱田浩美

https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


朝晩は秋らしく過ごしやすい気候となりました。読書の秋ですね。コロナ禍で巣ごもりが続くなか、友人から借りたミステリー小説を読もうと思います。「Book Club」も企画したいです、みんなで読みたい本があればご推薦ください!(F)