日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.182

1.コロナ禍でPXを高める4つのアクション
2.2022年のPXトレンド
3. 今後の予定

※本年も当メールマガジンを読んでくださりありがとうございました。来週30日(木)の配信はお休みします。次回は1月6日(木)となります。

1.コロナ禍でPXを高める4つのアクション


2021年もPX(Patient eXperience;患者経験価値)を考えるうえで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は切っても切れないものとなりました。コロナ禍においてPXをいかに高めるかを医療機関の経営的な視点から捉えた、総合コンサルティングファーム・アクセンチュアのレポートを紹介します。

 

COVID-19のパンデミックによって、医療機関は緊急ではない治療の中止、新しい感染対策の手順の作成、オンライン診療モデルの構築など、業務を劇的に変えなければなりませんでした。患者数の減少、オペレーションの変更に伴い、収益が悪化しました。結果としてPXも後回しにされましたが、そのようななかで新しい顧客ニーズを満たすために進化した医療機関は財務の回復が早く、他の医療機関から患者を獲得することができ、COVID-19以前より5〜10%の収益増加が見込めるとしています。

多くの患者はより安全で安心できる便利なサービスを求めています。そのため、COVID-19による治療の遅れや治療が受けられない場合は受診先を変更しています。患者の4人に1人は医療機関のCOVID-19への対応が悪かったと考えていて、患者の64%は医療機関を変更する可能性があるといいます。

また、患者の74%は予約時にオンラインチャットやテキストを使うとしているほか、58%は将来的に遠隔診療やオンライン診療などを利用する可能性を考えています。

COVID-19によって財政的にひっ迫している医療機関のPXが低い場合、再起が難しくなります。収入が50億ドル規模の医療機関では、PXの高い、低いによって今後1年間の純収入に9億ドルの差が生じる可能性があります。

レポートでは、PXを高めるための4つの方法について言及しています。

1.パーソナライズしたメッセージを送ることで患者の不安を解消する

2.最初のアクセス時における患者ニーズへの対応

3.オンラインでの新しいケアモデルの開発

4.ソーシャルチャネルを通じて患者の声を聞く

 

PXはこれまでも重視されてきましたが、コロナ禍では患者の新たなニーズに応えられない医療機関は、患者をとられるリスクが高まっており、期待を上回るエクスペリエンスの提供が求められていると指摘しています。全文は下記リンクからご確認ください。

Link:https://www.accenture.com/us-en/insights/health/elevating-patient-experience-growth

 

 

2. 2022年のPXトレンド


米ワシントン州シアトルに拠点を置く、プライマリ・ケアのプロバイダー「Vera Whole Health」は、2022年に期待されるPXの5つのトレンドを挙げています。

 

1.問題行動の受け入れおよび議論

人々の治療へのニーズ、精神的な健康状態について話したりすることに前向きになったことで、問題行動への偏見は失われています。カウンセリング、コーチング、グループセラピー、精神科治療、薬物療法などのサービス価値の理解が深まり、議論する人が増えています。医療機関が患者に必要な支援を提供するための新たな戦略を打ち立てることで、この傾向はさらに強まると考えられます。

2.遠隔医療は新しいものとなって発達する

COVID-19のパンデミックをきっかけに、遠隔医療のテクノロジーは受診控えを解消しました。医療へのアクセスを向上させることで、ヘルスケアの社会的決定要因をサポートすることもわかりました。しかしバーチャル診療はまだ初期段階で、2022年には大きな変化があると考えています。例えば診療の際に患者がビデオ通話で、自分の状態や要望についての質問に答えるといったトリアージを行い、診療を進めるうえで効率化を図ることができ、患者は最適なケアを受けることができます。

3.最新の予測分析の果たす役割が高まる

アナリティクスはリスクを予測するプロセスをこれまで以上に正確なものとしています。予測分析の適用により、ケアに大きなチャンスが生まれます。医療従事者がリスク要因をより的確に把握し、潜在的な問題が深刻化する前に治療できれば、患者の健康状態を改善することができます。

4.別々のものを1つに統合する

医療機関がより良いサービスを提供するためには、異なるデータを1つにまとめる方法を見つける必要があります。現在、患者は複数の医療機関に保管されている診療記録を持っています。これはプライバシー保護のために行われていますが、一部のヘルスケア企業では患者が自分自身の健康記録を作成することを支援しようとしています。

5.自己診断への対応

インターネット上のさまざまなサイトで専門家とは思えない意見が発信されていて、インターネットの利用によって自己診断している人が増えていることが問題となっています。自己診断を行う理由としては、医療機関への信頼感の欠如、受診による自己負担額の大きさ、従来の医療プロセスへのかかわりの低さなどが挙げられます。遠隔医療という選択肢があれば、受診の障壁を減らすことができ、ネットから答えを探す必要がなくなります。

「医療従事者が患者の声に耳を傾け、共感を示し、適切なフィードバックとケアを提供することは、2022年の課題に対応するために不可欠な行動です」と指摘しています。

 

Link:https://www.verawholehealth.com/blog/what-to-expect-in-2022-upcoming-patient-experience-trends

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、2022年もオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。3月5日(土)、7月23日(土)、11月26日(土)の3回、いずれも12:30-13:30を予定しています。内容などは決まり次第、メールマガジンやホームページでお知らせします。

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べる絶好の機会です、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


PX研究会のオフィス近くにスリランカカレーのお店ができたと聞き、ランチに行きました。写真の上のほうの小皿に入ったエビカレーをかけて、皿に載った食材をぐちゃっと混ぜながら食べます。すると……思いがけないハーモニーが生まれました!食文化の奥深さを感じました。(F)